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顧客地域シェアの理論と実践

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顧客データを保有している小売業などのチェーン企業は、GIS(地図情報システム)を用いて顧客分布を地図に可視化し店舗の実商圏を把握したり、折込チラシなどの配布エリアを最適化したりしています。

顧客は実際に来店したり購買した人ですのでいわゆる「実績」にあたります。商圏分析において重要なのはその実績がもうこれ以上増やせない最大値なのか、まだ開拓余地があるのかを知ることです。つまり顧客数だけではなく地域ごとの人口などのターゲット数に対する顧客獲得率を把握する必要があります。
GIS(地図情報システム)には小地域単位の人口統計データが搭載されているので、顧客分布と人口分布を重ね合わせると地域ごとのシェアがわかります。本コラムでは顧客データを用いて地域シェアを把握し、更にハフモデルという分析ロジックを加えて理論上の地域シェアと実際の地域シェアのギャップを分析していきます。

以下、順を追って分析ステップを見ていきましょう。

顧客分布の把握

顧客データを地図上に可視化するにあたって、漢字住所や郵便番号などの位置を特定する情報が各顧客に紐付いている必要があります。年齢や性別、来店頻度や購買金額など様々な属性が付いているとより深い分析が可能となります。
下の地図1はとある店舗に来店した顧客分布を表します。ひとつひとつの点が一人ひとりの顧客住所を表します。
map1
地図上の点の色が別れていますが、これは顧客属性によって表現を変えています。例えば男性は青、女性は赤とか、来店回数が3回以上の顧客は赤など、自由に変えることができます。
ただ、このような点の分布は「見誤る」ことがあります。平面上の地図に点の分布を表現しているので、その点が重なってしまうからです。そこで点の分布を面の分布に集計してみます。今回は500mメッシュという四角い地域単位で集計しました。

メッシュ単位の顧客分布

下の地図2は先程の顧客分布をメッシュ単位で表現したものです。全く同じデータでも、点の分布と集計したメッシュの分布では受ける印象もかなり異なってくるのではないでしょうか。

map2
点の分布ではかなり広域からも来店しているように見えましたが、メッシュに集計してみると近隣からの来店が多く、大多数の顧客は店舗の足元に集中していることがわかります。
ここまでの顧客分布は「実績の分布」を示しているに過ぎません。次に地域ごとのマーケットに対してどれだか顧客を獲得しているかという「顧客獲得率=シェア率」を分析していきます。

地域ごとの顧客シェア率の考え方

ここでシェア率についておさらいしておきましょう。下の図を御覧ください。
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店舗の商圏内にAという地域とBという地域があったとします。Aエリアの顧客は100人でBエリアの顧客は50人の場合、実績でみるとBはAの半分しかありません。ただ、各地域ごとのターゲット数を考慮して地域シェアで見てみるとAエリアは10%しかなく、Bエリアは25%もあるということになります。

実績だけで見ているとBエリアの顧客数が少ないのでBエリアに対する販促を強化しようという判断になりそうですが、シェア率で見ていくとAエリアを攻めたほうが効率的だという逆の判断となるでしょう。どちらも正しい判断かとは思いますが、両方の観点を持ちつつ意思決定することが重要です。それでは実際に地図上で見ていきましょう。

顧客とターゲットのクロス分布

下の地図3は先程のメッシュ単位の顧客数を縦軸に、ターゲットである人口総数を横軸にとって商圏を色塗りしたものです。判例の右下の濃い緑色の地域は、人口が多いにもかかわらず顧客が少ない地域、つまりターゲットが多いのに実績が低い地域ということがわかります。

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さらにメッシュごとに「顧客数÷人口×100」という式でシェア率を計算し、地図上に可視化したものが地図4です。

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理論上のシェア率

ここまでは実際の顧客データの分布とターゲットの分布を重ね合わせて地域シェアを算出しました。顧客シェアが増減する要因のひとつに競合店舗の存在があります。たとえシェアが低くまだ開拓余地があると想定されるエリアても、強力な競合店舗が存在していればそこからのシェア向上は困難かもしれません。
商圏分析・エリアマーケティングで活用される分析ロジックのひとつに「ハフモデル」というものがあります。このモデルは地域と店舗との距離関係と店舗の魅力値から、店舗の商圏内の各小地域単位で自店への吸引率を計算するものです。もともと1970年代から活用されているモデルで、店舗出店時の売上予測に用いられたりしてきた歴史がありますが、競合店舗の影響を加味しつつ、各地域から自店へどれだけ吸引できるのか、つまり理論上のシェア率を知ることもできます。ハフモデルのイメージは下の図を御覧ください。

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ハフモデル分析結果

下の図5はこれまで見てきた同じ店舗とその商圏を対象に、競合店舗(赤い丸印)を地図にプロットしハフモデル分析を行った結果です。赤い濃淡は各メッシュごとの自店への吸引率を表します。店舗の足元は自店への距離が近いので赤色が濃く(吸引率が高い)なっています。競合店舗の足元では逆に赤色が薄く(自店への吸引率は低い)なっていることがわかります。

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実際のシェア率と理論上のシェア

ここまで分析してきた実際のシェア率とハフモデルによる理論上のシェア率をさらに重ねていきます。

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判例を御覧ください。縦軸は実際のシェア率、横軸は理論上のシェア率です。右下の濃い緑色のエリアは理論上シェア率は20%~30%となり得るにもかかわらず、実際のシェア率は0%~10%にとどまっている地域ということです。この濃い緑色の地域がこの店舗にとっての最優先開拓エリアとなるのではないでしょうか。

終わりに

今回はGIS(地図情報システム)に顧客データを取り込み、人口統計データと重ね合わせ、更にハフモデルによる理論値とのギャップを分析しました。
関連する情報は技研商事インターナショナル株式会社のウェブサイトを御覧ください。

https://www.giken.co.jp/