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ドーナツ商圏という商圏の考え方

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小売業や飲食業など、多店舗展開のチェーン企業における商圏分析・エリアマーケティングは、GIS(地図情報システム)と共に進化してきました。商圏分析という言葉の通り、GISで様々な店舗の商圏を設定・定義することができます。今回のコラムではGISによる商圏の設定方法をご紹介しつつ、「ドーナツ商圏」という考え方を解説します。

GIS(地図情報システム)とは

GISは道路や地名、建物などで構成される地図に、国勢調査などの各種人口統計と店舗などの情報をレイヤーという層の形で重ね合わせて色々な分析を行うコンピューターシステムです。
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既存店舗や新規出店候補地を中心に来店可能範囲(=商圏)という形をシミュレーションし、その範囲内の各レイヤーの情報を抽出することによって商圏内の人口ボリュームやターゲットの分布を可視化することができます。

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様々な商圏設定

GISでは顧客の来店手段によって様々な商圏をシュミレーションすることができます。以下、代表的な商圏のタイプをご紹介していきます。

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1)円形商圏
最も基本的な商圏です。店舗同士を比較する際によく用いられます。

2)自動車商圏
道路の区間ごとに設定されている自動車の「平均通過速度」を利用して、店舗から道路に沿って◯◯分で到達できる範囲です。平均通過速度は国土交通省の調査データである交通センサスが利用されることが多いです。下の図は店舗から自動車10分圏です。北側には河川があり、橋を経由してしか移動できないことがよくわかります。

3)徒歩・自転車商圏
自動車商圏と同様に道路に沿った到達圏です。これは交通センサスではなく、徒歩なら分速80m、自転車なら時速10kmというように利用交通手段の平均的な速度を設定する場合が多いです。

4)電車+徒歩商圏
電車を利用して来店することも多いでしょう。これは各駅の平均運行間隔や駅間の運行時間、各駅停車や特急などの停車駅を加味して、徒歩と電車を利用した到達圏を設定するものです。

その他の基本的な商圏設定

5)多角形商圏
いわゆる手書き商圏のことです。予め土地勘がわかっている場合や河川や踏切、幹線道路など、商圏の分断要因がわかっている場合、地図上をなぞって定義することもできます。

6)行政界指定商圏
◯◯市や◯◯丁目といった行政界単位で商圏を設定することもあります。自治体単位で制度が異なる介護業界や、来店誘導施策として町丁目単位でポスティングを行う際に利用されます。

7)目標値商圏
半径◯◯kmや自動車◯◯分というように、範囲を指定して設定する商圏タイプではなく、例えば人口◯◯人を満たすのは半径何キロか、自動車何分かというような商圏設定方法です。自社の店舗が成り立つ一定の商圏ボリュームが把握できている場合、目標値商圏による商圏設定が有効です。
また、地図上にプロットした顧客数の◯◯%をカバーする商圏範囲はどのくらいかという設定をすることもあります。これによって実態としての商圏範囲をシミュレーションすることができます。

GISではこのように用途に応じて様々な商圏を設定することができます。ここまでご紹介したものは基本的な設定です。この他に「ドーナツ商圏」という商圏の考え方があります。ここからはドーナツ商圏とその活用例について解説します。

ドーナツ商圏とは

ドーナツ商圏とは、文字通りドーナツ型の商圏タイプで、店舗の足元ではなく、その周辺だけの実態を把握するための商圏設定の方法です。例えば店舗を中心とした半径1km商圏というのは、店舗から半径0km~1kmの間のエリアを分析対象としています。ドーナツ商圏ではその外側の1km~2kmの間を分析対象とするイメージです。ドーナツ商圏は円形だけではなく、自動車などの道路に沿った商圏タイプでも設定することができます。

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多くの場合、店舗に近ければ近いほど来店頻度や地域シェアが高くなるものです。顧客データや来店調査のデータを地図上に可視化してみればわかります。足元の商圏からの来店率を上げるための施策はやり尽くした、これ以上注力しようがないという場合、その商圏をさらに広げるため、シェアの高い足元商圏の外側だけを分析するというシーンで活用されます。

ドーナツ商圏の活用例

それでは具体的にドーナツ商圏が商圏分析でどのように活用されているかを見ていきましょう。
某商業施設を展開する企業が自施設の商圏分析・比較をしている際、この商業施設の来店客数は商業集積を示す指標(小売業年間販売額や小売業売り場面積などのデータ項目)と相関が高いことがわかっていました。
ある施設は周辺に競合が進出してきて、自施設の来店客数が半減し、別のある施設も同様に競合が進出してきたにもかかわらず来店客数に大きな影響が見られなかったということがありました。
影響を受けなかった施設をA、影響を受けた施設をBとして、足元商圏とドーナツ商圏内の商業集積(小売業年間販売額)を見てみましょう(下記は架空のイメージです)。

まずはそれほど影響を受けなかった施設Aの商圏を見てみます。競合施設の足元ではなく、自施設の足元に商業集積があることがわかります。
A

次に影響を受け、来店客数が半減した施設Bです。
B

自施設の足元ではなく、商圏内の外側に商業集積が偏っていることがわかります。競合の進出がなかった時は商圏の外側からも来訪してくれていたターゲットが、近くに競合ができたことによって、遠くの自店より近くの競合施設にスイッチしてしまったということが考えられます。
施設AとBは通常の半径◯◯km圏内の商業集積値は同じものの、その偏りが足元か外側かによって競合の影響を大きく受けるか受けないかということにつながったという例です。

ドーナツ商圏という観点で商圏を分析することによってこのような差が浮き彫りになります。